珍事件手記
8話 浮気調査
若い女性から婚約相手の素行調査依頼を受け、被調査者である男性を3日間尾行したが、3日間とも友人と思われる男性と飲食を共にするだけで、特別関係人と思われる女性の影は一切浮かび上がってこなかった。
尾行4日目の事である。
二人は、人通りの少ない場所に建っている「○×実業寮」と看板が出ているビルに入った。
「なんだ、会社の寮じゃないか!」
「今日も浮気相手と接触しなかったし、引上げましょうか。」
・・・と、そのときである・・・
「○×実業寮」3階の窓がガラガラと開いたのである。
その窓を注視すると、天井まで赤いベルベット生地で埋め尽くされた部屋に、ミラーボールが天井を回り、なんとも怪しげな雰囲気をかもし出している一室が目の中に飛び込んできたのである。
ディスコルームにしては狭すぎるし、社員の休憩室にしては派手過ぎる。まるでラブホテルの一室のようである。
しかし、ラブホテルにしては張込み中に女性が入室した事実は無い、その建物に入った人物は総てが男性である。
私達は、意を決して同所に飛び込むこととした。
私と調査員は、同建物出入口の自動ドアに立った。
黒い半透明のフイルムが張ってあるガラス戸が開き、内部を見渡すと、カウンターがあり、きな臭い男性が黙って我々を見据えている。
私は、すかさず付近に目を配り「ご予約の方は5%割引」という張り紙を目にし、咄嗟に
「予約はしてなんですが、空いてますか?」
と切り出した。
すると、カウンター越しから
「始めて泊まるときは紹介者が居なければだめ!」
との返答が返ってきた。
・・我々はそそくさと引返した・・
そう、同性愛者専門のラブホテルであったのだ。
次の日、その一部始終を依頼者に報告した時、依頼者は、目をまん丸にし、口を半開きにしたまま、暫く身動き一つしなかった。
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