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【現行犯逮捕】 憲法第31条は、「何人も法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられない」と規定している。 したがって、犯罪が行なわれたことを理由に犯人を逮捕したり、刑罰を科したりするには、その手続きを定めた法律が必要であり、それが刑事訴訟法である。 【逮捕の意義】 逮捕とは、人の身体を直接に束縛して自由を拘束することをいう。 身体を束縛する方法は、手錠をはめるとか、縄で縛るなどの方法もあるが、必ずしもこのような方法によらなくとも、逮捕者が被逮捕者の身体に寄り添って看視し、いつでもその身体を捕捉し得る態勢をとり、その逃走を防止する方法により自由を拘束する場合も逮捕ということが出来る。 逮捕の種類には、あらかじめ令状を準備して行なう「通常逮捕」と、一定の犯罪を犯したと疑うに足りる充分な理由のある者を逮捕後に令状を請求することを条件に逮捕する「緊急逮捕」「現行犯逮捕」の三種類がある。 この逮捕の中で「通常逮捕」と「緊急逮捕」は、検察官、検察事務官、司法警察職員でなければ行なえないが、「現行犯逮捕」は刑事訴訟法第213条に「現行犯人は、何人でも逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と定めている。 【現行犯人】 現行犯人とは、現に罪を行なっているところを発見された、ちょうど罪を行ない終わったところを発見されたという場合には、犯行事実がはっきりとしているので、そのまま逮捕をしても人権を侵害するという問題はない。 しかし、未遂の段階では犯罪事実行為中とは認められない。 したがって、単なる不審者という理由だけでは現行犯人とは言えない。 裁判例では、現行犯となる範囲を次のように示している。 ● 現に罪を行ない終わりたる際とは犯罪の実行行為の終わった瞬間はもとより、その後、多少の時間の隔たりがあっても、犯罪行為の行なわれた痕跡がまだ明確な状態にある場合を指し、必ずしも犯人がその場所にあることを要しない。 ● 現に罪を行ない終わった者とは、時間的段階に於ける観念で場所的観念ではないから、現に罪を行ない終わった者が、たとえ場所的には犯罪現場から多少異なった場所にいたとしても、なおこれを現行犯人として取り扱いえるものといわなければならない。 ● 住居侵入の犯人が、その現場から約30mはなれたところで逮捕された場合であっても、時間的には住居侵入の直後であり、現行犯人であるといえる。 ● 犯行の現場で犯行を現認した者がこれを追い、被疑者居宅入口までその跡をつけ、被疑者がその居宅に入るのを確認後、時を移さず警察に届出て、その警察官がこれを逮捕した場合は現行犯となる。 【準現行犯】 刑事訴訟法第212条第2項には、本来の現行犯ではないが、準現行犯として取り扱う旨を規定している。 @ 犯人として追呼されているとき。 犯罪終了後から引き続き追呼されていることは必要ないが、単に追われて逃げているだけではなく、その状況が犯人として追跡されていると認められる事情がなければならない。 その場の状況から、このような事情が認められれば、無言で追跡した場合でも、「どろぼう」と叫ぶだけで追いかけなくてもよい。 A 臟物または明らかに犯罪のように供したと思われる凶器その他の物を所持しているとき。 今しがたあった窃盗事件の臟物を所持していたり、血だらけの短刀を持っている場合は準現行犯となるが、犯人の自供により確認できた場合は準現行犯とは認められない。 また、臟物とは財産犯(窃盗、強盗、恐喝など)の犯罪によるもので、賄賂財における金品や賭博罪の金品は含まれない。 凶器その他の所持とは、実力支配可能の区域内にあるものと認められる状態をいい、逮捕のときに携帯していたときは勿論であるが、逮捕直前に捨てた場合でも所持に当る。 B 身体または被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。 犯罪の顕著な証跡のある準現行犯として認定するには、犯罪の証跡が目撃者の証言、犯行現場の状況などから明らかであることが必要で、犯人の自供により確認した場合は準現行犯とは認められない。 C 誰何されて逃走しようとするとき。 誰何と問質されながら、返答もせず突然逃げ出した場合は準現行犯に該当する。 この「誰何」は、警察官によるものでなくとも私人による問質でも良い。 【軽微な犯罪の現行犯】 刑事訴訟法第217条では、500円以下の罰金または拘留若しくは科料に当る罪については、犯人の住居または氏名が明らかでない場合と、犯人が逃亡する恐れがある場合のいずれかに限って逮捕が許される。 また、現行犯逮捕が制限される刑法上の軽微な犯罪は、次の通りである。 @ 騒擾罪における不和随行 A 多衆不解散(首魁を除く) B 過失建造物等侵害 C 過失往来危険(業務上の場合は除く) D 偽造通貨収得後知情行使(その名価の3倍が8千円を超える場合を除く) E 富くじ授受 F 変死者密葬 G 過失傷害(業務上、重過失は除く) H 侮辱 【凶器、臟物に対する処置】 凶器や臟物の捜索や押収は、一般私人はできない。 ただし、犯人が振り上げた凶器を一時取り上げ、自己または第三者の安全を確保することや、犯人の自殺を防止する意味においての一時預かりとしての行為は認められる。 【現行犯逮捕の住居立入】 一般私人が現行犯人を逮捕する場合、人の住居地に立ち入ることは許されない。 他人宅に立入る場合は、住居権者の承諾が有る場合に限り許される。 【現行犯人引渡し手段】 刑事訴訟法第214条は「検察官、検察事務官および司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官または司法警察職員に引き渡さなければならない」と規定されている。 「直ちに」というのは、一般私人が逮捕した現行犯人を取り調べたり、留置したりすることを認めない趣旨である。 したがって、現行犯人を逮捕したが、正当な理由がないのに引渡しを遅延させた場合は「監禁罪」が成立することとなる。 しかし、犯人を警察署へ連行または警察官が到着するまでに簡単な事情聴取や盗品や凶器を預かることは許される。 |
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